お客さんの指示通りに東奔西走するタクシードライバー。
見ず知らずの人を乗せ、たった数十分と言えどタクシーという閉鎖された空間で何人もの人と時間を共有していると、意外にも色んなことが起こります。
そしてそれは、必ずしも嬉しいことばかりではありません。どんな業界にも迷惑なお客さんというのはいますが、タクシーは一癖どころか二癖や三癖ある人も利用します。時にはとんでもない事件に巻き込まれることも。
その中でも、今回はあるあるネタ。タクシードライバーを数年やっていたら誰もが経験したことがあるような話と、その対策法をまとめてみました。これからタクシードライバーを目指そうとお考えの方は、ぜひとも参考にしてみてください。
泥酔 〜行き先くらいちゃんと言ってください、お客さん〜
深夜の飲み会帰りのお客さんは長距離の利用が見込まれるので上客とも言えますが、同時に最も面倒な客であると言えます。
飲み会の帰りにタクシーを利用する方は多いですが、泥酔しているお客さんは迷惑極まりないものです。行き先がはっきりしない場合もありますし、何よりシートに吐かれる可能性もあります。
行き先を言ったと思えばそれは数日後の予定のことで、違うと後から訂正され逆方向の家へと戻ったら、今度は「いつもはこんなにかからないのに、ぼったくりだ」と言われてしまう。「この道をずっと真っ直ぐ」と言うので従ったら、1時間経ってもまだまっすぐ。
県境を超えてもまだ真っ直ぐだというのでおかしいと思って交番に入れば、今度は「いくら何でも、そこまで真っ直ぐ行くのはやりすぎだ」とドライバーが怒られる始末、なんてこともあるようです。
泥酔したお客さんはなるべく乗せたくない、という気持ちも分かりますが、そこは意を決するしかありません。いざという時のためにビニール袋を常備する、道は曖昧にせずきちんと聞くなどして対処する必要があります。
いちゃつくカップル 〜ここはプライベートルームではありません、お客さん〜
どこでも二人の世界に入ってしまうカップルというのはいますが、もちろんタクシーの中でも二人の世界を築き上げてしまうお客さんがいます。さらに、タクシーは密室。何か起こったらたまったものじゃありません。
夜の繁華街で乗ってくるカップルは要注意。ほどよく酔っ払っており、服を脱ぎ出したりしたらどう対応したらいいのか分かりません。こちらから積極的に会話を振るなどして、未然に防ぎましょう。
それとは逆に、急に口喧嘩をしだすカップルもいます。次第に本気の喧嘩になり、殴り合いの大喧嘩に発展したというケースもあるようです。こういう時は無闇に口出しせず、嵐が通り過ぎるのを静かに待ちましょう。二次被害はごめんです。
クレーマー 〜お客様は本当に神様ですか?〜
タクシードライバーには、お客さんに触ってはいけないという決まりがあります。相手が女性だったらセクハラで訴えられるというリスクもあり、大変危険です。それを利用し、会計の際に手が当たった、といちゃもんを付けてくるお客さんもいます。
また、湯のみ茶碗をわざとドアに持たれかけさせ、開いた瞬間粉々になったそれを見て「骨董品だぞ! 弁償しろ!」と騒ぎ立てるというケースもあったそうです。彼らは料金を踏み倒し、安物の茶碗を高額で弁償させたそうです。その時期、こういった事件が十数件ありました。
こういったケースは未然に防ぎようがありません。何があったら自分で解決しようとせず、会社に連絡するか、警察にお願いしましょう。被害に合わないことが先決です。
乗り逃げ 〜立派な犯罪ですよ、お客さん〜
Photo By 401(K) 2012
最近、どういう時代なのか女性のタダ乗り犯が増えているようです。「この客は親切そうだから大丈夫」と心を許したら最後、真面目そうなサラリーマンや上品な女性が、タダ乗り犯へと変貌します。
「財布を忘れたから家に行って取ってくる」と言い、あの人なら大丈夫だろうと思って待ち続けて20分。何かおかしいと思い、人質に預かっていた携帯を見れば電波を受信できない模造品だった。これはよくある話で、所持品を置いて逃げることをタクシー業界では「置き抜け」と言います。
また、道案内すると言って指示通りに運転していたら、車を右に寄せられ、客はそのまま逃走。ドアを開けて追いかけようにも、壁が迫って開けることができずに逃げられてしまったということもあるようです。
乗り逃げの一番の対策法は、「免許証か社員証を置いて行ってもらえますか?」と言うことでしょう。そうすれば、「ああ、やっぱりあった」と言って素直にお金を払って帰ってくれる可能性が高まります。
それでも、悪いことばかりじゃないタクシードライバーの仕事
4つのパターンをご紹介しましたが、もちろんハプニングはお客さんによっても、ドライバーによっても様々。もっと酷い目に遭った、という人もいるでしょう。よくあるケースは未然に防げるようにし、対処法をどんな時も頭に入れておけば、いざという時も冷静に対処できるはずです。
もちろん、悪いことばかりでもありません。
お客さんの9割以上はまともで有難い方です。急いでいる方やお年寄り、体が不自由な方から頂く励ましの言葉が、私たちを元気付けてくれることもあります。
迷惑なお客さんのことばかりを気にしても仕方がないので、普通に利用してくださるお客さんのことは素直に「ありがたい」と思いながら仕事をすれば、楽しい仕事になるはずです。